1. トップページ
  2. >
  3. 芸術ブログ
  4. >
  5. 福井敬テノールリサイタル

福井敬テノールリサイタル

先日3月29日(金曜日)に自主公演として、日本のトップテノール「福井敬」氏のリサイタルを行った。国宝級と称されるその声はますます磨きがかかり、お客様のアンケートからしても、表現力等全てにおいて満足のいく演奏会であったように思う。
その演奏会のプログラムを福井氏と決めた経過を紹介したい。最初、福井氏から送られてきたのは次のプログラムである。
①君を愛す グリーク
②荒城の月 滝廉太郎/土井晩翠
③出船 杉山長谷夫/勝田香月
④待ちぼうけ 山田耕筰/北原白秋
⑤木兎 中田喜直/三好達治
⑥悲しくなったときは 中田喜直/寺山修司
⑦死んだ男の残したものは 武満徹/谷川俊太郎
~pause~
⑧カタリ カタリ(つれない心)  カルディッロ
⑨オペラ『トスカ』より “妙なる調和” プッチーニ
⑩オペラ『ウェルテル』より “なぜ私を目覚めさせるのか、春風よ”  マスネ
⑪オペラ『リゴレット』より 女心の歌  ヴェルディ
⑫オペラ『トゥーランドット』より “誰も寝てはならぬ” プッチーニ
私は②③④⑤の曲の中から2つを、よく耳にする曲目(シューベルトのアヴェマリアとかサンタルチア、帰れソレントへ)、に変更できないかと電話で伝えた。すると、福井氏は「高松は思い入れのある街である、だからこれでやりたい」と、そこまで演奏家が言うならそれでいくしかないと思った。
次に返ってきたのが次のプログラムであった。
①君を愛す グリーク
②荒城の月 滝廉太郎/土井晩翠
③出船 杉山長谷夫/勝田香月
④待ちぼうけ 山田耕筰/北原白秋
⑤木兎 中田喜直/三好達治
⑥悲しくなったときは 中田喜直/寺山修司
⑦死んだ男の残したものは 武満徹/谷川俊太郎
⑧小さな空 武満徹/武満徹
~pause~
⑨カタリ カタリ(つれない心)  カルディッロ
⑩オペラ『トスカ』より “妙なる調和” プッチーニ
⑪オペラ『ウェルテル』より “なぜ私を目覚めさせるのか、春風よ”  マスネ
⑫オペラ『リゴレット』より 女心の歌  ヴェルディ
⑬オペラ『トゥーランドット』より “誰も寝てはならぬ” プッチーニ
違いがおわかりになりますか?なんと、前半に武満徹さんの「小さな空」が加えられている。
演奏会が終わり、たくさんの方から今回の評価・評判を聞かせていただく。そうすると、今回のプログラムに仕掛けられた秘密がわかってきた。
福井氏としては、1部は日本人の心と日本語の美しさを伝えたかったのだと思う。⑥から⑧までは照明のエリアを小さく暗くし、彼と同郷である宮沢賢二さんの「雨にも負けず」を朗読した後で「悲しくなった時は」を歌った。ここからが1部のメインディッシュなのだ。
「悲しくなったときは」寺山修司作詞と「死んだ男の残したものは」谷川俊太郎作詞の歌詞を読んでいただきたい。
①から⑤までは序奏、料理で言うと付け出しやお刺身・前菜に食前酒だったのである。序奏と言う表現が適切でないのはわかっている、①から⑤のどの曲もその曲の持っている良さをちゃんと表現して、質の高い演奏であったことは押さえておきたいが、意味深い曲順であったのだ。
2部はイタリアオペラの素晴らしさと声を十二分に聴かせてくれたのである。
そして、最後は「故郷」を一緒に会場全員で歌い演奏会を閉めた。ここにも彼のメッセージがあり、実によく考えられたプログラムであった。もちろん、福井氏の歌唱力と表現力があるからできる技であり、誰もがまねのできるものではない。
プログラムの秘密について書きたいことはたくさんあるのだが、あまりに多くなるので興味のある方は私に直接聞いていただきたいと思う。
ここでプチ自慢を一つご披露したい、私の燕尾服のネームには「福井敬」と書いてある。今から25年ぐらい前、燕尾服が必要な演奏会に出演する機会があり、買うのが惜しいので彼に電話をして貰い受けた代物である。福井氏と私は大学の同級生で同じサークル(国立音楽大学イリス合唱団)でよく遊んだ仲なのだ。
皆様のお声があれば、是非とも高松で再演をしたいと思っている。
その時にプログラムの秘密を考えながら聴くのも悪くないだろう。