この香川県県民ホールは全国で唯一(オンリーワン)と言って自慢できるものがある。
それは、ホール敷地内に旧高松城の石垣があることだ。
その石垣は大ホール棟と小ホール棟の間にある。こうなったのは、大ホール棟と小ホール棟の建設時期が違うからで、大ホール1988年開館・小ホール1997年開館から分かるように、最初から大ホール棟と小ホール棟の二つを建設する予定はなかったと考えられる。まず、大ホール棟だけを建設した、その後に小ホールを建設する運びとなり、石垣の向こう側に建設した!というのが成り行きだろう。大ホール棟と小ホール棟を行き来しようと思っても、地上伝いには移動ができない。行き来するには、2階にある連絡通路を通らなくてはいけない。大ホール棟の玉藻公園側からいらしたお客様が、そこに見える小ホール棟に向かって進もうとすると石垣の壁がある。その石垣がずっと続いていて、そのまま行くことが出来ないことに気づき、迷ってらっしゃる姿をよく目にする。(もちろん、そのまま小ホール棟には行けないこと、大ホール棟の2階に上がってから小ホール棟へ行くことは表示してある)
まあ、少し大回りをすれば、2階に上がらなくても行くことはできるが…。
この石垣のおかげで、大ホールと小ホールでピアノの移動をすることはできない。他の大・小ホールがある劇場なら、コンサート用のピアノを複数台集めてのコンサートを実施する場合は、それぞれピアノ格納庫からピアノを移動させ、一つのホール舞台にピアノを集めて、複数台のピアノコンサートができるはずだ。
残念ながら、香川県県民ホールはそれができない。大ホールのピアノを小ホールに移動させるには、ピアノの運搬会社にお願いをして、約40mをトラックで運搬移動させるしかない。これ以外にもホール敷地内に石垣があることのデメリットは数多くある。
全国的に見て、お城の敷地内にホールがあるのはよく聞く話だ。しかし、ホール敷地内に石垣があるところなんて他にあるだろうか?
しかも、石垣は地上表面にあるばかりでなく、地上にある石垣よりも古い、築城初期の石垣が残っており、それは香川県県民ホール遺構保存庫で見ることができる。ご覧になりたい方は事前に連絡をいただければ見学可能である。この遺構については、香川県埋蔵文化財調査センター発行『いにしえの讃岐27号』に掲載されている。http://bit.ly/2cDF3Ir
また歴史の好きな方には、高松城跡 県民ホール小ホール建設事業に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書をご覧いただきたい。http://bit.ly/2dcBtE9
館内で出会うお客様には「このホールは全国で唯一、大ホール棟と小ホール棟の間に石垣があります。とても素敵なことですが、移動には若干のご迷惑をおかけすることになります。しかし、連絡通路をお渡りの際、石垣の様子と瀬戸内海の多島美をお楽しみください。」と申し上げさせていただいている。
この季節は「食欲の秋」「スポーツの秋」「読書の秋」「行楽の秋」「食欲の秋」「文化の秋」とも言われ、とても実り多い季節である。香川県県民ホールにおいても数々の催物が開催される。是非とも劇場にお出かけになり、芸術で心を豊に実らせていただきたいと思っている。
もちろん、開演前には石垣をゆっくりと鑑賞していただきたい。